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「あ、うん……ニュース、かかってる」
『うわ、本当? もしかしてあれ、見てる?』
そう言った零斗の声の後ろから、たった今テレビから聞こえたのと同じレポーターの声が聞こえ、のぞみは苦笑する。
「同じところだね」
『あ、うん……今そっちの音、聞こえた』
すると、仕事中であるにも関わらずレポーターが悲鳴を上げた。
『おっ、落ちました! 今、男性が屋上から落ちました……っ!』
のぞみは思わず携帯を取り落としそうになる。
今、自分が見たものが信じられなかった。
カメラが映し出していたのは、間違いなく屋上の柵を乗り越えた見知らぬ男で──そしてその人影が、何かともみ合うようにして手すりを離し、空中に放り出されたその瞬間だった。
カメラがグルン、と地面に向けられた瞬間、テレビ画面にはザーッと砂嵐が流れた。
「えっ、え!?」
『うわ、映るところだった……』
かすれた零斗の声で、のぞみは今見た映像がリアルタイムで起こった事件のものであることを思い出した。
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