2013年 初夏 【日嗣のぞみ】

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   人間は緊張しすぎると、一瞬前のことすら思い出せなくなるものなのか。  口を押さえ、のぞみは落ち着く為ハー……と長い息を吐いた。  すると、テレビ画面から砂嵐が消え、“しばらくお待ち下さい”というメッセージに切り替えられた。 『テレビ局の人……すごい判断だったね、今の』 「う、うん……」  一瞬で非日常に塗り潰された意識はまだぼうっとして、現実感がなかった。 『のぞみ? 大丈夫?』 「あ、うん。大丈夫。ごめんなさい」 『変なタイミングで電話してごめん、でももし見てたら怖い思いをしてるんじゃないかと……』  優しい零斗の声を聞きながら、のぞみはだんだん冷静さを取り戻していく自分に気付き、もう一度溜め息をついた。 「うん、ちょっと怖かった。ひとりで見てたら大変だったかも……」 『……なんて言って、俺がぞっとしたんだったりして』 .
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