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いつもの時間、いつもの満員電車に揺られながら、のぞみはふうと溜め息をついた。
毎朝、学校に行く為にこうして見知らぬたくさんの他人と密室の中で過ごす。
周りは誰もそんなことを気にしてはいないようだが、のぞみは毎日不思議で仕方なかった。
この電車に乗らなければ、1コマ目の授業に間に合わない。だからあえて不満を口にせず毎日を回してはいるが、どこの誰かも判らない他人と肌が触れ合って、どうして平気なのだろうか。
特に潔癖症というわけではない。が、全く知らない人間の肌や脂や汗に生理的嫌悪を抱くのはごく普通のことである筈だ。
清潔かどうかはあまり関係ない。
──が、どうして電車やバスでは許されるのだろう。
どの他人も普通の顔をしているが、満員電車に乗る時ばかりは何か神経を切ってしまっているに違いない。
今日もそんなことを考えながら、のぞみはなるべくドアに張り付いて他人との接触を避けていた。
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