86人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあ、そこまで気になるのは夏の間だけなんだろ? 夏休みも挟むし、少しだけ辛抱しないと」
「判ってるんだけど、でも……」
満員電車の愚痴で口を尖らせるのぞみを見て、零斗はフワッと微笑んだ。
その微笑みを見、のぞみは思わず言葉を失って見惚れてしまう。
人好きのする零斗のこの微笑みにつられた自分は、他の女生徒と何ら変わりがない気がする。
そんなことを考えながらのぞみが溜め息をつくと、零斗は「仕方ないなぁ」と小さく呟いて、机の引き出しから夏のスキンケア用のウェットティッシュを取り出した。
「こっち、おいで」
笑顔で手招きをする零斗を見て、のぞみの頬がわずかに朱に染まる。
のぞみと零斗が付き合い始めてから、もう3ヶ月だ。
.
最初のコメントを投稿しよう!