2013年 夏 【唐沢美咲】

2/32
53人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
   確かに長い人生を眺めてみればまだまだ若いし、フットワークも軽い。やり直すこともぎりぎりで間に合う年齢だろう。  だが、女という性を、もうウリには出来ない。  したくとも、誰もさせてくれない。  何も知らないふりをすればすぐに馬鹿呼ばわりされるし、知りすぎていても可愛げがないと言われる。かといって自然体でいようものなら「何も考えてない」などと陰で笑われる。  このプレッシャーから逃げるように寿退社していった女達を、もう何人見ただろうか。  都会で独身で働く、というのは女にとっては余程根性がないとやっていけない。  幸い仕事で苦労することはなかった。  同期入社の人間がどこか足りない天然物ばかりだったので、美咲は主任の座についていた。 .
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!