2013年 夏 【唐沢美咲】

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   前の彼氏と別れてもう2年になる美咲は、最近苛立っていた。  別に男がいなければ生きていけないたちでもない。  だからこそ故郷を出てきた。  気が向いた時に気が向いた男と軽く遊ぶ。そういう方が向いている。  けれどそれも若いうちしか許されない。  最近の自分の事情を思い、美咲はクラッチバッグを手に思わず大きく溜め息をついた。 「パンスト、換えなきゃ……恥ずかしい」  今日は、この不況の時代に業績が上がったことで、更に社員の士気を高める為立食パーティーが行われていた。  違う部署の、普段は接することのない人間と会える機会なのだ。  経理課の美咲には社内での出会いは期待できない。  だが今日は公然と出会いの場が提供されるのだ。これに乗らない手はなかった。 .
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