2013年 8月10日 【日嗣のぞみ・2】

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   そんな言い方はずるい、と。のぞみはもう一度そうやって悪態をつきたかった。  だが、零斗の真っすぐな瞳と優しい声で言われては、もう抗う術がない。恋をする女は、好きな男にはどうしても勝てないのだ。 「……あの」 「うん」 「じゃあ、お祭りに協力、する……」  こういうシチュエーションそのものに慣れていないのぞみの精いっぱいの反応を見て、零斗はふっと微笑んだ。 「いいの? それは別に、断ってもいいんだけど」 「ううん、あたしが妙なことにこだわってただけ、だから……零斗さんのおうちに協力できるのは、むしろ、嬉しい……」 「……判った」  零斗はそっとのぞみを抱き寄せると、そのやわらかな髪に頬ずりする。  ドキドキしながら、のぞみは零斗の腰にそっと腕を回した。そうしてやわらかく抱き合って、心の底から安堵する。 「ありがとう、のぞみ。ちゃんとしたことは、そのうちまたちゃんと仕切り直すけど……」 「うん?」 「末永くよろしく」  零斗は、その言葉を口にしたときだけのぞみに視線を落とした。その言葉と視線を受け、のぞみは頬を染める。  一生この腕の中で生きていくんだな……と、淡い未来を胸に描いた。 .
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