63人が本棚に入れています
本棚に追加
「だが、この時期に零斗がこうして連れてきたんだ。そのように扱うのは当然ではないか」
年配の人間独特の、何度も同じことを繰り返す習性。
節子はそこに微妙な改編を加えてのぞみに何か要求するような目を向ける。
何か嫌な予感がして、のぞみはテーブルの下で零斗の手を引いた。だが本気で寝入り始めたのか、彼は全く反応を示さない。
「のぞみさん。あんた、祭りで織姫をやらんかね」
「……は?」
「見ての通り、この村には若い娘っこがほとんどおらん。零斗の妹がおるが、主家筋と司祭の家から織姫は出せん決まりでな。数少ない子どもたちも織姫をやらせるにはまだ幼い。数年前からは人型を祭っているようなありさまだ」
「ひとがた……?」
「人形だよ。織姫の衣装だけ着せて、祭壇に寝かせてるんだ」
.
最初のコメントを投稿しよう!