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さっきから会話に参加してくる男性がカラカラと笑いながらそう言った。
聞いただけで、非日常の匂いがぷんぷんとしてくる。
のぞみがゴクリ……と息を呑むと、節子はふと睫毛を伏せた。
「うちの村には、本当に七夕神がおる。若いもんは形式のみと侮っておるが、本当におる」
やたら重々しい口調で言うものだから、神の存在の有無とは別に、のぞみは妙な責任を感じる。
「あの……そんなに大切なお役目でしたら、まだ部外者でしかないあたしなんて、よけいに……」
「どうしても嫌だと言うなら、無理には頼まん。あんたがこの村に馴染むのに更に時間がかかるだけの話だからの」
節子はそれきり、のぞみの方を見ることはなかった。
年配の男性もどうしたものか、という表情をしてから会釈をし、席を立って行ってしまった。
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