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「……土下座はいいから。そこまでしてもらうことじゃないし」
「いや、俺の気が済まない」
「あたしが見たくないの!」
のぞみが語気を強めると、やがて零斗の方が諦めたようにのろのろと顔を上げる。
「どうしたら、許してくれる……?」
その顔が捨てられた仔犬のようで、怒っていたはずなのにのぞみの胸がキュンと鳴る。これだから、惚れた弱みというやつは。
零斗の顔を見つめたまま何も答えないのぞみ。
彼女を見つめながら、零斗は溜め息をついた。
「……祭りの日に……」
「え?」
「13日の、祭りの日に、言うつもりだったんだ。のぞみには、ちゃんと……」
「……」
完全に、時機が悪かったのだと。
のぞみにも、それくらいは判った。
だが、一度前面に押し出した不機嫌の引っ込め方が判らない。
零斗の前で、こんなに負の感情をあらわにしたのは初めてだった。のぞみは恥ずかしくて俯いてしまう。
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