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おれのクラスには、リアリ・オルブライトという女がいる。
成績優秀、容姿端麗、品行方正。クラスの人気者のような扱いを受け、実際その交友関係は広いようだった。
筆記試験だけでなく、魔術の実技試験も学年トップを常にキープし、毎年行われている武闘祭では、一年生ながらも上位にランクインした実力を持つ。
これだけを聞くと、非常に素晴らしい人間のように思えるが――錯覚するが、現実は違った。
いや、おれにとっての現実は違った、と言ったほうが正確だろう。おれ以外の彼女を知る人間からすれば、リアリ・オルブライトという人間は先に述べた通り、成績優秀、容姿端麗、品行方正の三拍子が揃った完璧超人でしかないのだから。
まさか彼女の口から罵倒の言葉が出てくるとは思いもしないだろうし、彼女の顔が人を心底軽蔑するような表情を作るとは、夢にも思わないはずだ。というよりも、真実を言ったところで、誰も信じてくれないレベルの話である。
……とくにおれなんかの話には耳を傾けてはくれないだろうし、下手をすれば彼女の悪口を言うな、と逆に責められかねない。
なにせ彼女は性格が良い。人当りが良い。
――おれ以外には、だが。
彼女のおれへの接し方は、ほかのクラスメイトへの態度とは一八○度ずれていた。お前、本当にリアリ・オルブライトなのか、と目を疑い、耳を疑うほどに。
それはもちろん、おれにも非があるわけで、負い目があるわけで。一概には彼女が悪いとは言えないのだった。
もしおれがリアリ・オルブライトの立場だったら、彼女ほどの悪態はつかないまでも、少しは愚痴をこぼしてしまうかもしれない、と思うぐらいには。
彼女は、皮肉にも筆記の点数が学年トップで、なおかつ実技も優秀だったことが裏目に出たのだ。まさか彼女も自分の一年時の優秀過ぎるくらい優秀であった成績に苦しめられることになるとは、思いもしなかっただろう。
おれ以外の彼女を知る人間が、ウィリオル魔術学園二年A組在籍のリアリ・オルブライトの本性を想像できないくらいには。
――彼女はおれのパートナーになってしまった。
そう、学年で底辺をさまよう学力に、これまた学年最下位の魔術の実技成績を叩き出した、ウェルエナ・べレスフォードのパートナーに。
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