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「別に。そろそろ仕掛けようと思ってたし。ただのきっかけになっただけ。」
「そろそろって。俺が手ぇ貸してやれって言ったから?」
少し眉毛を上げた後、視線を反らして言葉を吐く。
「んなわけないだろ。自惚れんな。」
あー、際ですか。
「でも、なんで始めから本気でいかなかったんだよ?」
おかげで無駄にハラハラさせられたし。
霧島は少し考え込んだ後。
「始めから飛ばすと、ラストまで体もたないから。」
と、すっとんきょうな回答をした。
「なに言ってんの。運動神経の塊みたいな体してるくせに。」
「ふ、……どんな体だよ。」
くすくす笑う霧島。
そんなあいつを、どこか柔らかく見つめている自分がいる。
「霧島。」
俺の呼び掛けに、顔を上げる。
俺と霧島の目と目が合う。
「ありがと。」
少し目を見開いた後。
僅かに目を附せ、タオルで口許を覆う霧島。
ふ、何だよ。
照れてやんの。
そんなあいつを。
俺は。
ほんの少しだけ。
可愛いと……思った。
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