俺の知らない彼女

25/28
833人が本棚に入れています
本棚に追加
/277ページ
俺の目に映ったのは、膝に手をつき、激しく肩で息を繰り返す明らかに疲弊した霧島。 「あいつ、なんで。急に。」 異変に気づいた都ちゃんが霧島に駆け寄る。 都ちゃんの呼び掛けに頭を振り、無理やり体を起こすとバスケットゴールを睨み付けた。 プレイ続行の強い意志。 顔をしかめながらも必死にボールを追う。 「霧島ちゃん、どうしたんだろー?」 「俺が……知るかよ。」 ふと休憩時間に霧島が漏らした言葉が頭を過る。 『ラストまで体もたないから。』 ………………。 ラストまで体もたないって。 どういう意味だ? そもそも試合出るの、何であんなに拒んだんだ? 胸がざわつく。 バスケも試合も好き、なんだよな? それでも試合出るの、拒否する理由って……なんだ? 試合の前半は、明らかにセーブしてた。 意図的な体力温存。 それは始めから全力で行ったら、試合終了まで体がもたないって分かってたから。 体が、もたない。 カラダが……。 はっとして顔を上げる。 激しく呼吸を繰り返し、胸の中心を拳で押さえつける霧島の姿に目を見開く。 ―――あいつ! 「っ霧島!!もういい!もう抜けろっ!」 衝動的に体を乗り出し、コートに向かって声を張り上げた。
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!