俺の知らない彼女

26/28
834人が本棚に入れています
本棚に追加
/277ページ
俺の呼び掛けに、顔を向ける。 目を細め、ハッハと短い息を繰り返す霧島。 なんて顔、してんだよ。 「おまえ……体。」 「……余計な口出しするな。 黙って、見てろ。」 鋭く俺を睨んだ後、コート内へ目を戻す。 ―――っ。なんで。 眉を寄せ、奥歯を噛み締める。 俺の、せいだ。 俺の……。 体育館の掛け時計に目をやる。 試合終了まで、残り3分。 俺は、ただひたすら。 早くこの時間が過ぎゆくことを……。 祈るしかなかった。 ピーーーーーっ 終わりを告げるホイッスルが響くと同時に、コート内の霧島に走り寄る。 「霧島っ!!」 その場に四つん這いに倒れ込み、激しい呼吸を繰り返す霧島。 その傍らに膝をつき、横から様子を覗き見た。 眉をしかめ、虚ろな目は閉じたり開けたりを反復し。 汗が滝のように床に流れ落ちていく。 こんなになるまで……こいつ。 胸が詰まる。 「霧島……。俺。」 霧島の肩に、手を伸ばしかけたその時。 「あゆみっ!!」 バタバタと駆け寄り、強引に俺と霧島の間に割って入ると霧島の背中にそっと手を添える見知った女。 一ノ瀬……。 「………………。」 伸ばしかけた手を引っ込める。
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!