俺の知らない彼女

27/28
834人が本棚に入れています
本棚に追加
/277ページ
「あゆみ……。これ。」 一ノ瀬が手のひらを差し出す。 手の上に、小さな二つの白い錠。 ……く、すり? 何の? 霧島はそれを受け取ると口に含み、渡されたミネラルウォーターで流し込んだ。 「霧島……。それ。」 俺の呼び掛けに、霧島ではなく一ノ瀬が振り返る。 キッと睨み付けた後。 っパーーーーーーン 思いっきり頬を叩かれた。 「………………。」 突然の衝撃に、何も考えられないまま、ただ一ノ瀬を見つめる。 「あんたでしょ?あゆみを試合に出させたの。自分が何したかわかってんの? あゆみは……。あゆみはっ」 俺に怒りの眼差しを向ける一ノ瀬の目には、今にもこぼれ落ちそうなほど涙が溜まっていた。 そんな一ノ瀬を見て、頭の中の推測が確信に変わる。 霧島は……。 体、……壊してるんだ。 少なくとも。 全力でバスケが、できない程に……。 確信した事実に愕然とする。 なにやってんだ。 なにやってんだよ。俺はっ! 額に手を当て、思い切り爪を立てる。 なんで……俺は。 「安藤のせいじゃない。」 ………………。 絞り出したような低いその声に、はっと目を向ける。 ゆっくりと呼吸を整えながら起き上がると、一ノ瀬の肩に手を添え俺を見た。
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!