足りない

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「……くっ」 窓際のテーブルで、煙草をふかしているイチさんが、嘲笑う 「……な、なに」 ベッドの上でぐったりと、まだおさまりきっていない火照った身体をシーツで覆い隠しながら わたしは不安いっぱいでそうたずねた 「……ヤダ、って。何回言うわけ、お前」 見た事もない笑顔で、イチさんがそう笑う 「……も」 もう。 恥ずかしくて、言葉が出てこない。 ヤダ、ヤダ。って。 ――確かに、言った。のかな。 「……しゃ、シャワー。浴びてきます……」 恥ずかしくて、逃げ出したくなって。 あまりまだ身体を動かず余裕はないけど、自分の部屋に戻ろうと、ベッドから足をおろす 「ナンデ?」 吸ってたタバコをサッと消し終わると、ベッド脇に腰かけていた私の前で、イチさんが、立ちふさがった 「寝るんだろ、ここで」 「……え」 「シャワーも、あるし」 そういう話じゃない。 「……」 それは? どういう意味?
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