足りない

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「なんで?」 「なにが?」 私が質問してるのに、相変わらずなイチさんの返事は、全く会話にならない。 「……もしかして」 もしかして。もしかしなくても 「……新幹線乗る気、最初から無かったんですね?」 無言、のイチさん。 なら最初からそう言えばいいのに!! どーしてイチさんてこんな面倒臭い性格しているんだろうか プハッ、と私は笑う。 「……ご飯。何にしますか?」 ――まぁいい。 今更、イチさんの性格にどうこう言っても。仕方ない。 万年出張のイチさんからすれば、主要都市の名古屋なんて庭も同然。 美味しいお店は知ってるし、任せておけば心配するようなことは何もない。 ――そして予想通りご飯は美味しかった そのあと成り行きまかせに夜道を散歩。 繁華街は、思ったほど人通りは少なくて。 この街の夜は、案外静かだ。 明日は土曜日。 会社は公休。 「今日はゆっくり寝れますね」 美味しい食事に、ほんの少しのアルコール。 嬉しくてそう呟いた私の足元はもたついていて。 ――いつの間にか、繋いで絡まってる、指先。 「――ああ」 そんな風に、言ってたのに。
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