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出野さんが昇進してすぐ、新しい部署が設立される話を聞かされた時にはまだ何も知らなくて。
少したってから聞かされた、成田の出戻り話。
全く連絡も取り合ってなくて、今頃他に男でも出来てんだろうと思っていたし、そんなもんはもう俺には関係のないことだと思ってたのに。
――いざ、目の前にしたら。
この数年間。
離れていた時間なんか、なかったみたいに。
変わらない、アイツが、目の前に現れて。
――面食らった。
手に入れたと思っていたのに、するりと俺の腕の中から、逃げていった、女。
――失うのが怖くて。
向き合う事も、自分をさらけ出す事も出来なかった俺の前に。
俺を見て嫌そうな顔をした成田と再会して、
「お……おはようございます」
「なにしてンの?お前」
思わず、そう口にしていた
「あ、いえ。今日からこちらにお世話になることに」
「知ってるけど」
素直に、久しぶり、なんて能天気に言えるような気分になんかなれなかった
突然すぎて驚いたのと。
あんまりにも――綺麗になっていた成田の姿を見て。
面白くない
ただ、そう思った。
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