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天井から射す光で朝になったとわかった。
僕は起きて昨日の川まで行く。
まだ辺りには魔物の気配がない。どこへ行ってしまったのか、僕には探りようもない。さすがにこんなに水があると身体を洗いたくなってきた。
誰もいないし良いかな。
聖痕布は取れないかな。自分の呪いも見ておきたい。
手で解くと意外にも簡単に取れた。久しぶりに体を洗う。この際石鹸もほしいなんて贅沢は言わない。
ぼろぼろの服と聖痕布も丁寧に洗う。結構綺麗になった気がする。
しばらく裸でぼんやりする。
周りから鳥の鳴き声や木々の葉擦れの音がした。
不意に涙が込み上げてきた。
外だ。
自由だ。
そんな事がこんなにも嬉しい。
生きていることがこんなにも。
ああ。僕は。
どこまで愚かなんだろう。
嗚咽が収まっても涙はしばらく流れていた。
右手と肩を見る。紫色に変色した肌が確実に呪われていることを、確認させられた。それにしても一体何の血だったのだろう。
魔物の血は浴びれば死ぬという話は聞いたが、呪い続ける血なんて僕も、僕を切り取りに来た人たちも知らなかった。
いまだになんの血液だかは知らない。
それさえ分かれば或は、呪いが解けるかもと思うのに。
右手で掴むと、まだ乾いていないのに聖痕布は勝手に、右手と肩と右の頭に巻き付いてしまった。
少し冷たい。
何か食べられる実でも生っていないかな。
服があらかた乾いてから、僕は辺りを探すことにする。
偶然にも知っている木の実が生っていた。
良かった。しばらくは大丈夫そう。
そう考えて自然と苦笑が浮かぶ。
まだ生きたいのか僕は。
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