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洞窟に戻ると、今まで気にしていなかった卵の後ろの小山が気になった。
何かと土の山…。
手で土を払うと白い骨が出てきた。…人の骨だ。
それは大量にあった。
衣服も装備もそのままで重ねられて放棄されていた。
僕は悪いとは思いつつも、そこを掘り返した。
剣は半分に折れていたりしたものもあったが、刃こぼれしているだけの、まともな物が三振りあった。さすがに服は破れたりぼろぼろで使えそうになかった。
小振りのナイフ、手足の手甲は錆びていたが無事。
ただし、大きくて僕には纏えなさそうだ。
その他に魔導書が10冊ほど。
金貨と銀貨、銅貨が多数。
鎖帷子と騎士っぽい鎧が多数。
魔導の杖が6本。
頭蓋骨12個。
その他の骨多数。
…広間の隅に折れた剣で穴を掘って、骨を埋めた。3日かかった。
剣を振るって鍛錬する事にした。
いつ魔物に会うか分からない状況に住んでいるし。
魔導書も何とか解読しようと試みる。
体力をつけながらやろう。
やっと生きる意味を見つけた。
僕は貪るように知識を求め、鍛錬を続けた。
お墓の近くの壁に毎日一つ、傷をつけてカレンダー代わりにした。
あっという間に月日は過ぎてゆく。
ふと傷を数えてみると、半年が過ぎていた。
月日が変わるのが体感出来て嬉しい。
魔獣の鳴き声は聞こえるけれど、あの川にすら姿を現さない。
もちろんこの場所には森の動物すら、姿を見せない。
僕の呪いのせいなのか、それともこの卵のせいなのか。
魔導書は何故か初級編が一冊あったおかげで、読み進むことが出来た。
きっと成りたての魔導士が居たのだろう。
この中で魔導の練習をするのは少し心苦しかったが、広間の端で練習していた。
外でしたら魔物に気づかれそうだし。
もう少しで冬が来る。
さすがに此処で冬は過ごせなさそうだ。
僕は一大決心をする。
町に行ってみよう。
ここから一番近い町は、国を越えて降りることになる。
僕は生まれた国に決別を告げる。
さようなら姉さん。
どうかお元気で。
初級の魔導に空間支配があった。
便利なもので、旅人はたいがい使うと書いてある。
イメージは自分の考えやすいもの。
僕はこれかな。
「展開、クローゼット。」
両開きの扉が目の前に現れる。
そこに広間の捨ててあった装備や何もかもを全部入れ込む。
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