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プロローグ
命の灯が尽きようとしていた。
嫌でも分かる。"それ"は何も無い、真なる闇だったから。
人の想いが創りだした"それ"は、徐々に己の身体を蝕んでゆく。
そして悟った。
"それ"が全てを包み込んだ時こそ、終わりの時と。
どうして終わってしまうのか。それは分からないし、どうする事もできない。
けれど後悔の念はなかった。こうすることで、自身の願いは果たされる。
そんな気がしたから。
我ながら、なんて、お人良しなのだろう。そう思ったけれど。
ふたりの将来を見守ることができない。それだけが心残りだった。
どうか幸せになりますように。そう願いながら。
眠るように、瞳を閉じた――
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