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表皮もなにもかもをガチガチに強張らせ、それでも離れるまいと痛いくらいに締めつけてくる。
「……名前」
「え?」
「ホウライミツキって、私の名前。ミシエルさんはどうして知ってるんですか? しかも、フルネームで。私、出会ってから一度も名乗ってませんよね」
「え、えっと……」
ミシエルは笑顔を崩さない。
けれど、彼の背中の羽根は言葉よりも雄弁だ。
見る間に冷や汗で濡れそぼり、睨みつけるとビクッと縮こまる。
拒絶したもの?
さっきから、彼の言葉には思い当たるところが多すぎて、なんだかおかしいと思ってはいたけれど、そうか。
偶然と考えるには、あまりにもタイミングが良すぎたんだ。
なら、彼はきっと、あのことも知っているに違いない。
「どうして、なんて。聞くまでもないですよね……だって、考えてみたらこんなにタイミングよく現れてそんな話をするなんて変ですもんね。ミシエルさん。貴方、実は昨日からずっと、私のことを見てたでしょうっ!?」
「うぅ……っ!」
「何があったのかなんて、私に訪ねるまでもなく知ってるんですよね。違いますかっ!!」
「ち、違いませんっ!! すみません! 悪気はほんとになかったんですぅっ!!」
やっぱり。
「貴女から強い魔物の気配を感じたものですから気になったんですよ! 現実世界に生きてる人なのに、これはマズイなあと思ってですね!?」
「いつからつけてたんですか!」
「す、数日前からですぅっ! そんなに怖い目で睨まないで下さいよ……見つからないように、こっそりと様子を伺っていました。海洋研究大学に通う貴女が、いかに研究に没頭し、いかに優秀な成績を収められ――そのせいでどんなことが起こってしまったのかも知ってます……」
「教授連中にやっかまれて、院試を落とされちゃったことも?」
「はい」
「その原因になったのが、苦労して完成させた研究論文を盗まれて、先に発表されてしまったせいだっていうのも?」
「はい。……補足すると、その論文を盗んだ教授というのが、貴女が密かに交際を続けていたゼミの担当教授だったということも、全部知ってます」
「……」
無言で、手の平に息を吐きかける。
スパーン!!
「痛ぁいっ! ひ、酷いです! いくらなんでもビンタは酷いですよぅっ!!」
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