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「やかましいっ! そんな、天使っぽい格好してるくせに、人の私生活を盗み見だなんて最低です!」
「し、仕方がなかったんですよ! 初めは偶然だったんです。 そもそも、ぼくの任務は現実世界に魔物が逃げ込んでこないように見張ることなんです。魔物の気配を察知して、駆けつけてみたら貴女がいました。まだ、分離する前の魔物をくっつけたまま、普通に街を歩いていたものですからビックリして……」
「……」
「何かの拍子で魔物が実体化するようにでもなったら大変だなぁと思っているうちに、貴女の精神を痛めつけ、踏みにじり、不安定にするような出来事が起こっちゃったじゃありませんかっ!! いけません、ホウライミツキさん。そんな若い御空で、自分以外の全てを拒絶するもんじゃありません。誰が貴女を傷つけようとも、貴女を守り、支えてくれている存在は必ずありますっ! さあ、心を開いて魔物を受け入れて下さい!」
「出来るわけないでしょうが――っ!! それだけ知ってて何で分かんないんですか! 私はもう誰のことも信じたくないんです!! 誰に守られたくもないし、誰も守りたくない! 今後の研究も、生活も、全部一人でやっていくって決めたんですから、ほっといて下さい!!」
「……それですよ、それが、貴女から魔物が分離してしまった原因です」
ホウライミツキさん、と、ミシエルがもう一度私の肩に手を置きかけたときだ。
アパートの下の階から、カンカンッと廊下を駆ける健康サンダルの快音が聞こえてきた。
「大家さんだ!」
「ええっ!?」
『海月ちゃあーん、大丈夫ぅ!? やっぱり心配になって、警察の人に来てもらったからねー!! あ、お巡りさんっ、こっちこっち。ここのB棟の二階です!!』
ナイス、大家の大山田さん!!
密かに警察に通報だなんて、粋な真似を。
さすが、曲者揃いといわれるこのオンボロアパートの学生達を統括しているだけのことはあるっ!!
徐々に近づいてくるサンダル音に、顔を青くするミシエルに向かって人差し指を突きつけ、
「観念しなさい! この変態ストーカー天使もどき。貴方みたいな人は警察にしっかりしょっぴかれて、留置所でがっつり頭を冷やしてくればいいんです!」
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