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「そう言われましても……うひゃひゃひゃひゃ!! ちょっと!? どさくさに紛れてセクハラしないで下さいよ!!」
「誰がするか――っ!!」
私は何もしてないし、そんな余裕があるわけもない。
でも、彼の言うとおり、何かがミシエルの脇をくすぐっていた。
白くて細くて、ペラペラした薄いもの。
なんだろう、と出元を探ってみると、なんと、私のお腹にサラシのように巻きついている魔物だった。
「なんだか、触手みたい……へえ、そんなのも出せるんだ?」
「良い魔物ですね」
怪訝な顔で見上げると、碧い瞳が嬉しそうに輝いていた。
「力を失って、カラカラに干からびた身体になっても、なんとかして貴女を守ろうとしている」
「な……っ!? そ、そんなこと誰も頼んでませんっ!!」
「望むも望まざるも、です。人間、誰しも一人の力じゃ生きていけません。生きていけると思っている人は、勘違いをしています。自分の方から周りを切り捨てているのに、やっかまれていると思い込んでいます。貴女が望めば、力を貸そうというものはたくさんいるのに」
「いませんよ、そんな人……」
「そうでしょうか? ぼくは貴女の力になりたいですよ」
「……」
ミシエルの笑顔は、相変わらずうさんくさい。
なのに、それを吹き飛ばすくらいの優しさで、彼は笑うのだ。
どう返事をしたらいいか、正直なところ迷ってしまった。
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