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ガンガンゴンゴンッ!!
背中からの衝撃に耐えながら、じっとりと睨みつける私の視線を、実に穏やかに受け流しつつ、ミシエル。
「朝起きて、布団のかわりに乗っかっていたのは正体不明の未確認生物。なんだこれは。シラタマ? いや、わらび餅……? おっかなびっくり、指の先でツンツンしてみようとしたそのとき! ドアの向こうで響いた、可哀想なぼくの悲鳴……!」
「……」
「改めてお礼を言わせて下さい、ホウライミツキさん。ここのアパートの大家さんに見つかって、「この、変質者!」と追い回され、ゴキブリのようにホウキでひっぱたかれていたぼくを助けて下さって、本当にありがとうございました。天使憑きのマモノビトであるぼくですが、あのときばかりは貴女の方が天使に見えましたよ。あはは!」
……助けなきゃよかった。
つくづく、自分はお人好しだと思う。
おまけに運が悪い。
ミシエルの笑顔の向こうに、真っ青な水平線がキラキラと輝いていて泣きたくなる。
実は昨日、人生の何もかもを放り出したくなるような出来事が、立て続けに起こってしまったのだ。
だから、今日はとてもじゃないけど、授業になんて出席する気分にはなれなかった。
せめてもの慰めに、海岸沖の小島にあるダイビングスポットへ一人でゆっくり潜りに行こうかと考えていたのに。
「マモノビト? なんですかそれ……なにが悲しくて、朝っぱらから妙な役職を押しつけられたり、謎の生物と壮絶なバトルなんか繰り広げなきゃならないんですか……そういう数奇な運命は、二十二歳にもなるオバサンには必要ありません。どっかの夢見る中学生にでもくれてやって下さいっ!!」
「そうしてあげたいのは山々なんですけどね。あの魔物が選んだのはホウライミツキさん。そして、この運命に選ばれたのもまた、貴女なんだからもう仕方ないじゃないですか。親が子供を、子供が親を決められないのと同じです。これも自分の人生、あれが自分の魔物なんだと、広い心と身体で受け入れて頂くしかありません」
「受け入れてって……」
身体で?
嫌な予感がしたとき、それまで絶えず背中を叩いていた振動がピタリと止まった。
それはもう、シーンと。
ドアに耳をつけてみても、物音一つしない。
「あれ?」
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