kiss19 -笑顔の仮面- 後半

10/13
2546人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「...まだ早いんだよね」 佐藤は、真面目な口調に変えて、呟いた。 「もっと心の整理がついてからじゃないとさ。 今はまだ、心の余裕、無いんだ」 寂しそうに佐藤は言った。 そっか、まだ元彼のこと好きなのか....。 まだ、俺に心を開く余裕は無くて、 俺の気持ちを知っても、あいつは動きようが無いってこと。 でも100%ごめんじゃないんだから、一応の兆しはある。 「なら、……いいや」 アイツがいつか、俺に心を開くときまで待とう。 そう思った。 けれど、 あいつの口から、とんでもない爆弾が飛び出した。 「小栗の恋人は仕事でしょ?」 ん? なんでそうなる? でもアイツは、本気でそうだと思っているらしい。 まあ、今の時点では佐藤は俺の彼女じゃないし、そうなるか....…。 そして、アイツは、いつもの如く予想に反する事を口にする。 「総務課に入り浸ってるでしょ」 「なにそれ?」 総務課に頻繁に顔出ししてるとは、思ってない。 たまたま仕事の用事があるから 総務課に足を運んでいるだけで、女に会うためじゃない。 それなのに、 総務課の女の名前を次々に挙げて 俺が誰目当てで通っているのか、当てようとしている。 しかし、佐藤が告げる名前の主達は、 残念ながら記憶に留まってはいなかった。 総務課の女子社員は大人数で、 どの顔も化粧のせいか、似たり寄ったりに見える。 自分の仕事に関係ないと思うと、 途端に頭に入らなくなるのは、俺の悪いところでもある。 それよりも、佐藤の考えはどうかしている。 お前に告ったのに、何で、女漁らなくちゃならない? アホか、こいつ、 「意外と東野さんだったり」 好きな女の口から、別れた女の名前が漏れる。 もしかして........ 俺と東野との関係、 ........知ってる?
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!