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「...まだ早いんだよね」
佐藤は、真面目な口調に変えて、呟いた。
「もっと心の整理がついてからじゃないとさ。
今はまだ、心の余裕、無いんだ」
寂しそうに佐藤は言った。
そっか、まだ元彼のこと好きなのか....。
まだ、俺に心を開く余裕は無くて、
俺の気持ちを知っても、あいつは動きようが無いってこと。
でも100%ごめんじゃないんだから、一応の兆しはある。
「なら、……いいや」
アイツがいつか、俺に心を開くときまで待とう。
そう思った。
けれど、
あいつの口から、とんでもない爆弾が飛び出した。
「小栗の恋人は仕事でしょ?」
ん? なんでそうなる?
でもアイツは、本気でそうだと思っているらしい。
まあ、今の時点では佐藤は俺の彼女じゃないし、そうなるか....…。
そして、アイツは、いつもの如く予想に反する事を口にする。
「総務課に入り浸ってるでしょ」
「なにそれ?」
総務課に頻繁に顔出ししてるとは、思ってない。
たまたま仕事の用事があるから
総務課に足を運んでいるだけで、女に会うためじゃない。
それなのに、
総務課の女の名前を次々に挙げて
俺が誰目当てで通っているのか、当てようとしている。
しかし、佐藤が告げる名前の主達は、
残念ながら記憶に留まってはいなかった。
総務課の女子社員は大人数で、
どの顔も化粧のせいか、似たり寄ったりに見える。
自分の仕事に関係ないと思うと、
途端に頭に入らなくなるのは、俺の悪いところでもある。
それよりも、佐藤の考えはどうかしている。
お前に告ったのに、何で、女漁らなくちゃならない?
アホか、こいつ、
「意外と東野さんだったり」
好きな女の口から、別れた女の名前が漏れる。
もしかして........
俺と東野との関係、
........知ってる?
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