kiss19 -笑顔の仮面- 後半

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あいつの瞳は、 蕩みがかって濡れていて、 笑顔の奥に隠す佐藤の甘い姿を想起させられる。 どうしてだよ。 なんで俺は、こいつが好きで、 なんでコイツに振り回されてんの? こんなの俺らしくないだろ? 俺自身に我慢ならず、佐藤を抱きしめた。 アイツは「え?」と驚いたが、そんなの関係ない。 その顔の貼り付いた笑顔を剥がしたい。 その笑顔が歪む姿を見たい。 ……佐藤の心の中まで、覗きたい。 俺の欲望は果てしなく、 そして、アイツの全てを支配したいって思った。 あんな告白クソ食らえだ。 「佐藤、……Hしよ」 ーーーーーーーーーーーーーーーー 案の定、佐藤はブチキレた。 無理やり押さえ込んで、次の段階へと入ろうとした俺は、思い切り嫌われた。 自分から動いた結果がこれだ。 あいつの脅える目。 俺を怖いと感じている姿は、 二度と回復し得ない信頼関係を壊すには、十分過ぎる行動だっただろう。 酔った勢いだったとはいえ、 自分がした失態を大いに呪った。 多分、俺と佐藤の関係は、前のようには回復しない。 そう思うと無性に涙が溢れてきて、 アイツの前でカッコ悪い程ボロボロ泣いた。 思い切り驚いていたけれど、 俺のしでかしたことに対して、 佐藤は、それ以上何も言わずに、逃げるように立ち去った。 「ぜってえ....嫌われた.....」 俺という存在に、 「却下」の烙印を押されて、つき返された気分に落ちた。
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