2548人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
kiss20 - 一万回の想い -
☆☆☆
レーナが私の言葉を、簡潔に纏めた。
「つまり、告白されてたのに、
他の女とお似合いだとか言っちゃったわけ?」
「それは....怒るよね」
と、モリリンが、激しく頷いた。
「そーいうの知らなかったし、
小栗の質問が、CD聴いた? だったからさ、
告白観た?
だったら、全然、答え違ったのに.....…」
焼き鳥屋での、小栗の行動を非難する。
「嘘ついたアンタも悪いでしょ!
CD聴いてもないのに、聴いた振りして。
さらには、別の女と付き合っとけ!
なんてさ、
失礼にも程があるんじゃない?」
レーナの指摘に、返す言葉も無い。
「面目無いです....」
しょぼしょぼと漏らして、二人の視線から逃げた。
「やっぱ彼って、草食男子だったか....」
初代、分析官モリリンが呟いた。
其の言葉に食いつく。
「え、小栗のこと言ってんの?」
「そうよ、なーんで、面と向かって告白しないの?
むしろメールで告白したほうが確実なのに、
何その、超危険な時限爆弾。
一生知らないで、生涯終ってたらどうすんの??」
たしかにそうだ。
小栗の作成動画は、時限爆弾である。
ファイルを開かずに、
一生独身を過ごす自分のラストシーンを妄想し、涙が零れ落ちた。
「そもそも、こんな遠まわしすぎる告白する男子は、お断りよね。舞~ちゃん」
と、
レーナがばっさりと小栗を切り捨てた。
「メールでも何でもいいから、
ちゃんと私が気づく告白して欲しかった」
小栗の気持ちを知っていれば、全く違う、二人だったはず。
片想いなんだって、
キスフレでしかないんだって、
自分を押さえ込むことも、小栗のキスを疑う事も、無かったのに...。
「こんな、面倒な事したのはさ、
アンタが恋愛に踏み出せないほど傷ついてたって、気づいてたんじゃない?
どんなに時間がかかってもいいから、
自分の殻から抜け出せ、ってコイツは言ってるのよ。
人を愛するコトが恐かったあんたを、
穴倉から引き摺り出そうとしても、根本的解決にならないから、
前に一歩踏み出せって、言ってんのよ」
「一歩....…」
小栗は以前、
『一歩前に出てみる?』
って地下鉄のホームで言った。
『前に進めよ』
このUSBをくれた給湯室でも、
『佐藤の絆創膏は俺が持ってるから』
って、
何度も、何度も、背中押してくれた。
そして今朝の、別れ際、
『待ってる』
って、言葉。
あれは.......。
最初のコメントを投稿しよう!