kiss20 - 一万回の想い -

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--------------- 翌日、佐藤にとにかく頭を下げた。 信頼回復には、時間がかかったとしても、 佐藤に拒否され続けるわけには行かない。 「いーよ。べつに」 いつもの如く佐藤は「いーよ」と受けたが、 その言葉は、見た目上の「いいよ」でしかない気がした。 出来ることなら一日中、佐藤に謝り続けていたかったのだが、 そういうわけにも行かず、 四方山部長と共に、今月の山となる契約式に向かった。 本来なら最高に高揚する席なのだが、 佐藤との一件のせいで、 今日の俺は、どこか冷淡で、俯瞰で物事を見ている気がする。 それが功を奏してか、 大事な式の間に、緊張することなく仕事を進めることが出来た。 「君の度胸には、毎回驚かされるよ」 と、今回の仲介役を買って出た遠山商事の専務が、 俺の肩を叩いて、労いの言葉をくれた。 今日の締結式も含め、 たかだか3年足らずの俺には、雲の上の人々とする大きな仕事ばかりだ。 「これもいい経験だ」と、四方山部長の言葉通り、 俺は、いい経験を沢山させてもらっている。 だが今日ばかりは、仕事よりもなにより、 佐藤とのことを解決しなくてはならないという頭があって、 気づくと俺の足は、 佐藤のいるだろう会社へと、向いていた。 「何しに来たの?」 佐藤はいつもどおりの憎まれ口調で、俺をオフィスに向かい入れた。 普段通りであることが無性に嬉しくて、笑みが漏れる。
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