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「佐藤って、小栗の家に居るの?」
と、3年年上の杉田が質問してきた。
「ああ、まあね」
「刑事ドラマみたいだよな。
犯人逃亡中で、佐藤が、唯一の事件目撃証人。
また、口封じにいつ狙われるか判らないんだろ?
どう? お姫様を守るナイト役は?」
何処と無く嬉しそうに、事件を杉田は語る。
「偽善的正義感と、本能的欲望との葛藤でくたくた」
きょとんとした表情を向けて、
すぐさま会話の揶揄に気づき、顔をにやけさせた。
「ああ、佐藤可愛いしね。それは大変だなぁ~」
杉田は、ふふっと笑って、俺の肩をバシバシ叩いた。
つい先日、佐藤は、好みじゃないと言ったくせに、もう意見を変えている。
ほんっとに、適当な奴だな....。
俺はというと、
佐藤との二人きりの部屋に心臓バクバクしっぱなしで、
睡眠不足の毎日を送っている。
ただでさえ資料作りに忙しいというのに、
アイツが動くたびに反応して、
集中なんか出来なくて、いつも以上に作業に時間がかかってる。
しかも、いつ鳴り出すか判らない電話が気になって、
ゆっくり風呂になど浸かっている暇など無かった。
幸せ半面、我慢は半端ない。
「大変ならさ、佐藤のこと、俺が面倒みようか?」
「別に大変じゃないから」
杉田の言葉に瞬殺で反論する。
なんでコイツがしゃしゃり出てくる??
「でもさ、小栗って、週末出張入ってたよね。
俺の担当、都内近辺だし。出張無いからさ、
俺なら、佐藤のそばにずっといられるよね」
杉田がにっこりと、俺に微笑みかけた。
「........」
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「出張行かないことにしたから」
「え? なんで小栗が出張キャンセルしてるの??」
佐藤は、眉を寄せて俺の様子を疑った。
杉田が引き受けるとか言ったら、
多分こいつは、
「うん! 杉田君とこでお世話になる! 小栗今までありがトー」
とか言って、さっさと退散すんだろうな。
お前のノー天気な頭ほど、
杉田は純粋な親切心だけで
物事引き受けるオトコじゃないって、気づいてないし....。
「そうだなぁ。神田さん所にでも頼み込むか....…」
途端に青ざめる佐藤。
そう簡単に、佐藤を手放せるわけないだろーが、
バアーーーカ!
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