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kiss 21 - MoonLight -
☆☆☆
なっちゃんが車椅子に乗った状態で、病棟に戻って来た。
車椅子を押す旦那様が、
赤く光るランプが点灯したままのカメラを片手に、病室のドアを開ける。
カメラは常になっちゃんを中心に回り込んでいる。
........どうやら、
出産までの一部始終を収めるらしい。
「何揉めてるの?」
と、お腹に何やら沢山のコードをつけた状態で、
なっちゃんは私達に尋ねた。
遅れてやってきた看護師達が、
ベッドに横たわった彼女に機材のセッティングを始めている。
私は押し黙ったが、
レーナは今しがた観た「小栗の告白」について語り始めた。
なっちゃんは、全てをレーナの口から聞きながらも、
陣痛がやってくるたびに、断末魔をあげた。
額の汗をぬぐい、私達へと向き直る。
水を一口含んだ後、溜め息と共に話し始めた。
「動画で告白ねえ。なんとも今時と言うか、
直接告白しないなんて、相当小心者なのね....」
「小栗の小心者度は判った。
草食男子であることも判った。
けど、今更、
この告白に答えるってさ、どうかと思うんだよね」
と、なっちゃんに言う。
「勿体無いなあ、舞が要らないなら、私が欲しいなぁ」
「え?」
と驚いたと同時に、
背後でカメラを構えている旦那様が存在していた事に気づいた。
今にも泣きそうな表情で、
乙女な言動を告げた、なっちゃんを見つめている。
そんな、旦那様を無視してなっちゃんは、言葉を続ける。
「いつ開くか判らないものなのに、
こんな事を言えるって、
相当真剣に舞のこと思ってないと出来ないでしょ?
だって10年後の可能性だって在るのに、いつまでも君を想うって、
彼は、永遠の愛を、舞に誓ったのよ、
それって凄い強い想いがなかったら言えないわよ」
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