kiss19 -笑顔の仮面- 後半

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------------ 佐藤の気持ちを確認するために、 アイツと二人で会うことに決めた。 給料日前の奢りの誘いに、アイツはまんまと乗ってきて、 経理部に頭を下げただけの報酬は、一応、手にしたわけだ。 あとは、堅苦しくない場所で、佐藤の気持ちを聞くだけだ。 「焼き鳥?」 佐藤が不服そうに言ったが、ここの店がベストだった。 店内は狭くて、カウンター席しかない。 それに、 リーマンや若者だらけの、 がやがやとした雰囲気の大衆的な鳥屋ではなく、 落ち着いて、じっくり酒を愉しみたい気分にさせてくれる店だった。 予約は一月先まで埋まっていたのだが、 四方山部長に連れられて この店に何度か来店していたおかげで、どうにか予約を取り付けることが出来た。 だが、 その不服そうな顔をみると、ここじゃなかったのか? と若干の選択ミスがあったことを、感じさせられる。 「CD聞いた?」 USBの中には、二つのファイルがある。 Aを開けば、ニルヴァーナのアルバムCDのファイル。 Bを開けば、俺の気持ちがこもった動画が入っている。 念のためCD側のファイルのみをクリックしたとしても、 CDを聞き終えた後、自動的にファイルBに移行するように設定しておいた。 俺の「告白」は、必ず佐藤に届くはずだ。 「聴いたよ」 「最後まで....…、聴いた?」 途中までだと言うのなら、今ここで告白してしまおうかと思った。 あの告白を無効にしてしまう。 佐藤を手に入れるまで、この先も待ち続けるなんてクソくらえだ。 「うん、聞いた」 佐藤は、ごく普通に言う。 顔色は.......、変わりもしない。 なんだ、その反応。 「俺に言うこと無い?」 ちょっときつい口調で、佐藤に追及してしまう。 考えていた計画が崩れていく。 「ありがとう」 「それだけ?」 「感謝感謝で、ございます」 なんだそれ.......。 こいつ、俺の告白なんだと思ってんだよ? 結構、大まじで告白したんだぞ、 あの告白のせいで、心臓バクバクしすぎて、一睡も出来なかったっていうのに、 何だよそれ......。
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