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夢の世界に彼はいた。
「朝霧・オルタナ=優花(アサギリ・オルタナ=ユウカ)。魔法戦争条約に則り、日本に滞在するならば指定住居区に移ることを命ずる」
ある時、ある孤児院で、金髪ロングの白いワンピースの小さな女の子が屈強な軍服を着た男に手を引かれてトラックに乗せられる。
「優花ぁぁぁぁぁぁぁ!」
そんな事実を納得出来ない黒髪ショートの彼は、少女の名前を呼びながら叫ぶ。
泣きじゃくりながら、夢の中の小さな彼は少女を追いかける。
どれだけトラックが離れていっても。どれだけ少女が離れていっても。
転んでも、服が汚れても、犬の尻尾を踏んで追いかけ回されても。
彼は少女を追いかける。
「優花ぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁああぁぁぁ!」
時は2010年。魔法が発見され、魔法戦争予告が発令された年。
世界対戦による魔法戦争であるから、ハーフは滞在する国の指定住居区にしか住めなくなっていた。
少女もその被害者。
こうして、少年少女は離れ離れになる。
そして、この日から世界は大きく変わっていく。
革命と言っても違いない。
変化と言っても違いない。
少年少女が世界を背負うかもしれない世界では、異端児は嫌われていく。
☆
そして時間は経ち、九年後、十六歳になった彼は、ある意味有名となっていたのだった。
「神之 静香(カミノ シズカ)! 疑似魔法戦争中になぜ寝ている!」
神之、夢を見ていた少年は怒鳴られて目を覚ます。空には青と白が散りばめられており、時折爆弾が爆発したり雷が落ちたりしていた。
「パートナーがいないからです」
白衣を纏い、黒髪ロングを靡かせる女性教諭に怒鳴られたことについて、適当に返答する。
パートナー。
魔法は今では恋愛の力と言われてしまい、恋する男女でなければ使うことすら出来ない。
神之のいるクラスは三十九人。一人足りないのは仕方ないのだが、神之がそれを不満に思うどころか受け止めてしまっている。
それに対し、女性教諭が怒るのは最早日課。当たり前の状況。
「はぁ……では私と組もう」
「俺が普通だったら先生と組んでも魔法の威力無いじゃないですか。先生に恋なんて抱いてませんし」
「ちっ……だからお前は『異端児の集い――マジックアンチ』なんて不名誉な称号をつけられるんだぞ」
女性教諭はいつも通りの返答に眉間にシワを寄せて、呆れてため息をついた。
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