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神之静香が女子に触れるのを渋ってる間にケリをつけろ。
これは神之が入学した時から流れていた噂であり、『ある事件』がきっかけで神之はこの『関東魔法戦争対策学校』略して関東魔法学校に入学した。
日本と契約したのはただ一つ。戦争で勝った暁には朝霧・オルタナ=優花と生涯共に安心して生きていけることを保証する。
これは、神之が『絶対魔法』で人を殺せないことや、事件のことを踏まえての計画故に、神之が契約を破る、又は契約を『絶対魔法』で書き換えることすら出来ないことも承知済み。
更には魔法の発見者、あるいは作った張本人と思われる人物により、魔法戦争を無かったことにも出来ない。
だから神之は魔法学校にいる。
「聞いた? 今日転校生が来るらしいよ?」
神之の噂はジワジワと広がったのに、転校生の話題は一瞬にして広がった。
神之はいつものように一番後ろの窓側の席で、昔のながらの木で作られた椅子に座り、本を読んでいた。
日本の文化がここ数年で変わるわけもなく、確かに魔法で便利になったこともあるし、外国との交遊も余裕でしている。
戦争、と言ってもそんな悪い空気ではないということだ。
――今日も晴れか。
活字から目を離し、外を見やれば、昨日の疑似魔法戦争の最中の寝起きに見た光景とまったく同じ空があった。
今日も変わらぬ日が始まる。
勉強して疑似魔法戦争して、寮に帰って就寝の繰り返し。
他の奴らみたいに転校生の話題など気にならない。ましてやパートナーと遊びに行ったりなどない。
あるとしたら白坂女性教諭にたまに強制連行されるときくらいだ。
教諭であるはずの白坂は、実のところ年は神之の一つ上であり、彼女もまた戦争では有望株なのだ。
「座れー今日から仲間になる奴を紹介するぞー」
トントンと出席簿を肩に叩きながら白坂が入ってくると、話をしていた生徒達が各々の席に座る。
それを確認してから白坂の「入れ」という指示が出たと同時に、彼女は入ってきた。
神之は空を映していた瞳を転校生に向けて、目を丸くした。
「か、河合 奈乃(カワイ ナノ)です! よろしくお願いいたします!」
ペコリと頭を下げた黒髪ロングの清楚そうな、制服を纏いし生徒。
それは、優花とまだ笑顔で遊んでいれたころの孤児院の仲間。
姿は多少なりとも変わっているが、それは確かに神之が知っている河合奈乃だった。
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