距離感

9/11
前へ
/90ページ
次へ
「はい?」 「なんでそんな風に 人の心にズカズカと 踏み込んで来るのよ…」 私の質問に東雲さんは やっぱり表情を変えずに 答えた。 「前島香織という プランナーの世界を もっと広げて欲しいからです。 冬木部長を気にして 自分の世界を狭めているのは あなた自身です」 両手で顔を覆って テーブルに突っ伏した私の髪を 東雲さんの手がそっと撫でる。 「あなたを見てくれる人は たくさんいます。 あなたがどれほど この仕事に情熱を賭けているか きちんと見てくれている人は デザイン課にも大勢います。 もっと自分らしく 生きるべきなのでは ありませんか?」 …あったかい…。 大嫌いなはずだったのに なんでこんなに この人の手は温かいんだろう。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12988人が本棚に入れています
本棚に追加