8 six month later

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チャペルの扉が開く。 ガラス張りの祭壇は光が降り注いで乱反射し、溢れて眩しくて胸の高鳴りが止まらない。目がくらみそうな光の中に政基が立っている。私は一歩ずつ祭壇へ向かう。十字架の向こう側には海が見え、私の大好きな人たちがこちらを一斉に見ている。   しあわせってこういうことかも。そう思いながら、ちょっぴり吹き出しそうになる。   私、確か、三十歳の誕生日、一人でも十分幸せだ。とか言ってたはずなのにね。あれは確かに強がりではなかったんだけど、まさかこんな風に違う形の「幸せ」を掴もうとすることになるなんて。   音楽と共に一歩ずつ踏み出して、政基の元にたどり着く。横に並びチラリと夫になる彼をうかがう。   うん。やっぱりいい男。決断に一点の曇りもない。   “Yes,I do”と言って夫婦になる。これから先は二人で新たなステージに乗り込んでいく。   楽しい事だけじゃないかもしれない。ちょっぴりどころじゃなく欲張りになった私は、政基の手に負えない時もあるかもしれない。   けれども、きっと、大丈夫。この根拠のない自信こそが『愛』なんだろう。   ベールが上げられる。政基の瞳に私が写り、彼の瞳が囁く。   百合江 百合江 ゆりえ   一生囁いていて。私もあなたの名前を呼び続けるから。 完 .
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