虎の子は小さくても猫じゃありません 番外編

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「ママー。いっちゃんが、いっちゃんが追いかけてくる」 託児室に迎えに行くと泣きじゃくりながらほのかが私の後ろにまわりこんだ。うーん。最近、ほとんど毎日こんなかんじだな……。 「ほのか、一哉に嫌だからやめてって言ったの?」 「うっうっ。嫌だって言ってもやめてって言ってもいっちゃんが追いかけてくるー。おっ追いかけてくっ、うわーん」 困ったなあ。あ。ご本人登場だわ。 「百合江ちゃん、お帰り」 「ただいま。麻衣子ももうすぐだからね」 「うん」 一哉はそう言うと私の後ろに隠れているほのかをちらっと見た。そのとたんほのかがぎゅうっと私のスカートを掴む。 「ほのか、おうちに帰る準備して」 「はい」 ほのかは猛ダッシュで帽子やかばんをとりに行った。 「ねえ、百合江ちゃん、いつになったら僕にほのかをくれるって約束してくれるの?」 またか。 一哉は遼一くんそっくりなかわいらしい顔でにっこり笑ってそう言った。こんなにかわいい男の子はなかなかいないと思う。 黙っていればね。 …………。でも口調はほんっとに麻衣子そっくり。 「一哉、あのね、ほのかは犬や猫じゃないから、誰にもあげないわよ」 「じゃあ、近い将来必ず僕の妻にするって書面書いてくれるだけでいいよ」 …………。 つま? しょめん? いつも思うけど、一哉は本当に五歳児だろうか。 .
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