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「あ! かあさま」
一哉は麻衣子を見つけると駆け寄ってきた。うんこういう所も五歳児らしい。まあ子どもは子どもだもんね。
「かあさま、百合江ちゃんがほのかが大人になるまでほのかをあげないって言うんだ。後何年でほのか大人になる?」
おいおい。まだ諦めてないのか。しかも大人になったらあげるなんて約束してないんだけど。
「そうねえ。成人は二十歳だけど結婚は十六歳でもできるから最短だと12年くらいかしら。まあほのかは百合江ちゃんの子どもだから、もっと時間がかかりそうよね」
麻衣子、私の子どもだから時間がかかるって、どういう意味?
「12年だね?」
いきなり幼稚園児らしい鞄の中からあり得ないものが出てきた。最新式の小型パソコンを開くとスケジュール帳の、ほのかの誕生日に何やら書き込み始めた。
12年後のほのかの誕生日に……。
い、いちや? 私は一言もほのかをあげるなんて言ってないよ。私があんぐりと口を開けていると麻衣子が真っ黒な微笑みで一哉に囁く。
「一哉、でも男の子は18歳まで結婚はできないのよ。だからそれまでに沢山やるべき事があるわよね」
一哉は「うーん」と唸って自分の18歳の誕生日にも印をつける。
「目標と計画さえしっかりしとけばいいんだよね? かあさま」
一哉は麻衣子に微笑んだ。黒い。この親子ホントによく似てる。一哉は帰る仕度の為に託児室の奥へ消えた。
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