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「ママ、まあちゃんも準備できたよ」
ほのかは、弟の支度ができたのを誇らしげに報告する。政信の帽子は少し斜めになっているけど、政信はほのかに構ってもらうのが大好きなので可愛らしい笑顔を浮かべて。こう言った。
「ママ、かえろ」
「帰ろうね。じゃあね、麻衣子」
「ええ。また明日」
三人で帰ろうとすると、一哉がほのかを呼び止めた。
「ほのか、12年後だから覚悟してね」
ほのかは何の事か分からないにも関わらず、一哉が恐ろしいのか、コクコクと首を縦に振った。
大丈夫かなあ?
車に二人を乗せて、発進させてから、ほのかに尋ねた。
「ほのか、一哉の事、嫌い?」
ほのかは可愛らしく首をかしげる。
「嫌いじゃないよ。でもいっちゃんは意地悪言うから」
「どんな事言うの?」
「ほのかが、パパと結婚するって言ったら『親子じゃ結婚できない』って言うんだもん」
あはは。そりゃまあそうだけど、一哉の事だから恐ろしく高圧的に言うだろうな。
「だからパパと結婚できないなら、石崎のおじちゃんがいいって言ったら、石崎のおじちゃんはほのかが大人になる頃には、おじいちゃんになってるから無理だって言うんだもん」
石崎くんの名前が出てきて私は、右折しなければいけない所を左折してしまった。
「ほのか! それは絶対に麻衣子には言ったらだめよ!」
「どうして?」
「どうしても!」
そんな事麻衣子に聞かせたら……。
「やっぱりドMは遺伝するのね、うふふ」
って益々あの親子の思う壺じゃないか。ああ。不安。これから一体どうなるんだろ?
end
『初恋ギャンブラー』へ続く。
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