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電気のように激しく弾けながら俺の喉を流ているのは、瓶一本分のサイダーの川だ。
瓶の冷たさを手に感じて、喉を鳴らしながら空を見上げると、さわさわ揺れる木々の葉の大きな隙間から、赤い夕焼けが見えた。
夕焼けの空にはカラスが忙しなく飛び交っている。その後方では、金色に染まった雲がカラスを穏やかに見守っている。
サイダーを飲み干して顔を元のところまで下げると、目の前にはほんのり赤やら金を水面に映して炎の如く揺らめく小さくてゆるやかな川があった。
そういえば、この川と関わるようになってから、俺はサイダーを愛飲するようになったのであった。
瓶を石の上に置いて、空いた右手でなるべく平たい石を選んで、俺は川に浮かぶ金色の雲めがけてそれを投げた。
ぽちゃんという可愛らしい音を一度鳴らして、石は澄んだ川の底へと沈んでいった。
金色の雲からは、波紋が広がっている。
「おい水巻!」
誰かの咆哮と、石をじゃりじゃり踏み鳴らす音が川原中に響いた。
また丸茂に見つかってしまった。これは面倒なことになった。
ここで丸茂に見つかったことは、過去にもう数え切れないほどあったが、それでも無性にここに立ち寄りたくなるときがあるから、どうしようもない。
今日も無性に、ここでサイダーを飲みたくなった。その『無性』はとても強くて、今日の授業だってまるで頭に入らなかったほどだ。
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