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「もう二度と来ないでっ!」
バタン、と派手な音を立てて、目の前のマンションの部屋の重い扉が閉まった。先程部屋の住人であるホステスに平手で殴られた左頬が、ヒリヒリと熱を持っている。
はぁ、と、一つ浅い溜息を洩らしながら少年――久遠聖(くおんあきら)は手に持っていたコーラのペットボトルで左頬を冷やしながらマンションを降りる為にエレベーターへと向かう。
聖はエレベーター内で右のポケットに突っ込んでいたセブンスターに火を点けた。煙を一呼吸だけ吸って吐きながらエレベーターを降り、同じ右ポケットから取り出した携帯からまた別の女へと電話を掛ける。
「ぁ、すみれさん?うん、僕、聖だよ」
聖は電話で話しながら煙草は咥えたまま、電話先の女性に今夜の宿を交渉しつつマンションを後にした。
夜の生温い空気と鼻を突く色んな匂いに眉を寄せながら、聖は繁華街の人混みに消えていった。
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