初夏、売りました

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 私も名前、入れて貰おうかな。  そう思いながら本を差し出し、自分の名前を言おうとした瞬間、 「何だよ、まだ読んでねーの?」  そう言った真宮寺くんのペンが『染谷藍さんへ』と迷いなく動いていた。 「え……ううん。もう読んだよ。うちにもう一冊あるから」  普通に喋っていた。 「さすが染谷!売り上げに貢献してんじゃん」  真宮寺くんがそう言ってニカッと笑う。 「当たり前でしょ。だって私、昔から真宮寺くんのファンだもん。知らなかった?」  何となくザワつく周囲の目も気にせず、私達の会話は続く。 「染谷。俺の書くフィクションは、いつか必ずノンフィクションになる……だからちゃんと見てろよ」  そこには、昔と全く変わらない真宮寺くんがいた。
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