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それでもやっぱり気になって、
たまたま洗面所から出た所で
会議室から出て来た前島さんと
遭遇した時に俺は聞いてみた。
「あのさ…
橋本と加藤って…
その後、どうなの?」
俺の問いかけにポカンとしながら
首を傾げた前島さんに
若干焦りながら言葉を吐く。
「あ、いや。
良く言い合いしてるみたいだけど
喧嘩って感じでもなさそうだし。
うまく行ってるのかなって思って」
「どうなんでしょうね。
でも千夏はあまり相手に
していないみたいですよ」
「そうなんだ。
…いや、加藤も早く
新しい恋してくれたらいいなって…
そう思ったからさ」
自分の心に仮面を被せて
吐き出した言葉に気づかれまいと
ハハハと笑ってオフィスへと戻る。
入口のドアを開ける前に
後ろから着いて来た前島さんに
作り笑いをひとつ見せて。
「橋本は、あれでも
本気で加藤が好きみたいだし
うまく行くといいね」
また心に反した言葉を吐いて
オフィスのドアを開けた。
ホントに俺って情けない。
いつまでこんな風に嘘を並べて
生きるのだろう。
けれど…
俺と別れてからの千夏は
本当に仕事も頑張っていて
あんなに努力している千夏の夢を
俺の我儘で壊すなんて、
もう二度と出来ないんだ。
いずれ…
俺はここからいなくなるのだから。
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