自己嫌悪

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東雲と別れて俺は 駅に向かいながら爪を噛んだ。 恐らく東雲は 千夏が誰かに操られていると 薄々感づいている。 千夏を切るべきか…? 大きく揺れ始めた俺の気持ちに トドメを刺されたのは… 千夏が仕掛けた子供じみた罠。 全てが終わったと思った。 必死にごめんなさいと 繰り返す千夏に 酷い言葉を吐き出す。 「あんな幼稚な罠を 勝手に仕掛けたお前を 俺が許すと思う?」 俺に手を伸ばしていた 千夏を振り切って俺は その場を後にした。 …もう… 何もかもが終わった。 余裕を失くした俺は 意味もなく前島さんに 好きだなんて言葉まで吐いて ますます壊れて行く。 俺は一体… …何がしたかったんだろう。 そんな疑問を感じていたその時 前島さんから言われた言葉。 「千夏が好きなのは… 冬木部長じゃなくて… …小野さんだと思います」 本当は分かっていた。 だけどそれを意地でも 認めなかったのは… 俺が臆病だったから。 けれどもう、俺は 取り返しのつかないほどまでに 千夏を傷つけた…。 東雲を壊すはずだった罠は… 気付いてみれば自分と千夏を 壊すだけのものだった。 歪んだ思いで 突っ走っていただけなのに それに酔いしれていた あまりにもくだらない自分に ただ笑いしか出なかったんだ…。
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