自己嫌悪

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前島さんだけを先に オフィスに戻した後、 俺は車の中でハンドルに うなだれたまま頭の中を整理する。 本当に愛し合っていた東雲と前島さん。 そしてこんな歪んだ俺を 愛してくれていた千夏。 みんなを幸せな道に 戻してあげるとしたら… もうこれしか方法はない。 心の中で決意を固めて 俺は人事部へと足を進めた。 人事部長の栗田さんは 俺の大学の頃の先輩で ある程度の融通も利くだけに その思いを告げる。 「栗田さん… 俺を…香港支社に 戻して貰えませんか?」 「はっ?なんで?」 「東雲の代わりに… 半年後に俺が香港に行きます」 「本気で言ってるのか?」 「はい、本気です」 渋い顔で悩む栗田さんだったけど 前向きに検討するとの返事を 貰って人事部を出た。 俺がここからいなくなれば 千夏も新しい恋に進めるだろう。 そして前島さんと東雲も…。 それはただここから俺自身が 逃げたいだけかもしれないけれど。 そしてもうひとつは デザインコンペに出品する作品。 東雲とのNo.1対決は… もう俺には参加する資格なんかない。 ならば… 納得したインテリアしか 家に置けない東雲のために… アイツのためだけに作ってやりたい。 そうする事でしか 自分自身への戒めが 考えられなかった…。
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