自己嫌悪

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『…ユキくん…?』 「ああ…」 『…もう怒ってないの?』 「怒ってないよ」 怒るどころか俺は千夏に 謝りたいのに。 『……っ……』 電話の向こうで泣き始めた千夏に 優しく声を掛けた。 「今まで千夏を苦しめてゴメン」 『…………』 もう… 千夏を自由にしてあげなければ… そう思いながらその言葉を伝えた。 「千夏…。 俺の事なんて忘れて新しい恋に進め。 お前はホントにいい女だから きっと俺なんかよりもっともっと お前を大切にしてくれる男が 必ず現れるから…。 だからもう… 俺とお前の関係は終わりにしよう」 その言葉に千夏の涙声が 必死に俺にすがりつく。 『ユキくん…いやだよ…』 「ダメ。 お前は幸せにならなきゃ。 俺みたいな最低な男になんか 惑わされるな。 真っ直ぐ前を見て行くんだぞ。 …千夏は… 必ず素晴らしいプランナーに なれるから」 『ユキくんっ……』 「今までありがとう。 これからは仕事のパートナーだ。 千夏の成長を楽しみにしてる」 泣いている千夏の声に たまらなく苦しい思いを 感じていても… 俺は千夏を受け止める事は出来ない。 こんなにも純粋な千夏を… 俺みたいな汚れた男が 幸せになんて出来るはずがない…。 千夏の前から いなくなるべきだ、と。
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