自己嫌悪

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それからの俺は、とにかく 千夏との距離を置きながら 東雲と前島さんの遠距離恋愛を 少しでも応援してあげたくて 何かいい方法はないものかと 頭を巡らせていた。 香港支社の支社長の セクハラ問題で冬木部長が 香港に異動になり 今度は香港デザイン部長の 横領が発覚して東雲が 香港デザイン部長に 昇進してしまった。 それを機に大きく揺れ出した 前島さんはこの仕事を 辞めるなんて言い出して…。 けれど俺はそれを冷たい態度で 阻止するしかなかった。 だって東雲は… 東雲が帰りたい場所は ここしかないかもしれないのに…。 5月の連休返上で 横領の事実確認のため 俺は香港に向かった。 香港支社に着いて オフィスに入って行くと 泣きながら東雲を見上げてる美杏に 若干呆れながら声を掛ける。 「東雲までかよ…」 その声に慌てたように 顔をあげた東雲と美杏。 美杏には日本に来た時にあれほど 東雲は無理だから諦めろと 言い聞かせておいたのに まだ懲りずに東雲を 口説いてんのか?なんて 思いながら歩み寄った。 「誰もいないオフィスで 二人で何をやってんの?」 俺の言葉に顔を真っ赤にして 「違います」なんて 即否定した美杏に ちょっとだけ笑いが 込み上げたけど。
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