自己嫌悪

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まぁ東雲は何があっても 前島さん以外の女になんて事は ないと思ってるだけに それはほんの冗談で。 早速東雲の本心を確認する。 それは何故東雲が意地でも 前島さんに香港に来いと 言わないのか… その理由が俺の思っていたもので 間違いないのかを確かめるために。 「東雲はさ… 前島さんに自分たちが 日本で暮らすための 家を作らせてあげたかった。 その時期が来たら… 自分がこの会社を辞めて 日本に戻るつもりだった… …違うか?」 俺の質問に小さく「はい」と 答えた東雲の瞳が揺れる。 やっぱりなって思った。 けれど俺を越えた東雲は この会社の考え自体を 変えて行く力を絶対に 持っている。 コイツの将来も… 前島さんの才能も… 二度と潰しちゃいけないんだ。 自分勝手な罠を仕掛けた俺が 二人を本当に幸せに してあげれるように… 俺なりに必死に考えたその思いを 東雲は理解してくれるだろうか? 「彼女な… もう誰も苦しめたくないから 今すぐ仕事を辞めて お前のそばに行くって 言ってたぞ。 だから俺は辞めさせない、 退職願は受理しない、 そう言って断った。 それで良かったんだよな?」 俺の問いかけに東雲は 真っ直ぐに見つめ返して 「はい」と頷いた。 この瞬間、俺の目指すべき場所が 決まったんだ。 2年先を見据えて… 今俺がすべき事が何なのか…。
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