仔犬な男2

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私は「東子」という名前を気に入っている。基本的には「滝川」より「東子」のほうがしっくりくるのだ。 合コンの時から飲んでいて、多少酔いもあったのかもしれない。 あまり深く考えず安易に答えを出してしまった。 「いいんじゃないかな」 自分から言い出したくせに、私の答えに入江くんがフリーズしている。 そんな彼を初めて見た。 今夜は全て彼に主導権を握られてこの店まで来てしまった。 ここにきて、ようやく私が優位に立てた気がした。 私は彼を頬杖をついて観察していた。 しばらくして、彼は姿勢を正して座り直した。 「練習していいですか?」 「へ?」 入江くんの言葉に、今度は私がフリーズした。 私の優位はほんの一瞬だった。
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