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「おはようございます!東子さん」
間違いもしない。彼の声だ。
声の主は隣に並んで歩き始めた。
周りは通勤の人たちが大勢いる。
同じ会社の人間が他にも居るかもしれない。
傘で隠れるようにして、周りを伺う。
さっきまで鬱陶しく感じた雨も、こうなると逆に恵みの雨に思えた。
「あのね、会社では『東子さん』はどうかと思うの。そんな呼び方する男性社員は居ないでしょ?」
私は小声で話す。
たぶん先週末私たちにあんなことが起こってなければ、『東子さん』でも良いのかもしれない。
けれど、ああなるとさすがに意識してしまう。
周りに変に思われるのが怖い。だいたい二人の関係は説明しようがないし、普通じゃないし、
やっぱり不釣り合いだし・・・
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